産まれてきた王子には、ガウタマ・シッダールタという名前がつけられました。ガウタマというのは、名字のようなものですので、以下、王子をシッダールタと呼びましょう。
浄飯王にとっても摩耶夫人にとっても、初めてのお子様です。ご両親はもちろんお城の中、あるいは村の人々も大きな喜びにとっても満ちあふれたことでしょう。
ところで、シッダールタが産まれた時の逸話に有名なものがあります。
彼は生後間もなく、右手を高く天を指し、左手を下に伸ばして大地を指して言いました。
「わたしは天にも地にも、もっとも尊い者である」と。
これが「天上天下唯我独尊」として伝えられています。
この言葉は「わたしが一番偉いんだ」と捉えられがちですが、この時あたかも天からは甘露の雨が降り、花々が無数に散り大地を覆い、清らかな音楽が流れ、神々や精霊たちが誕生を祝ったと語られていますので、尊い人が生まれたことを讃嘆しているとも考えられます。
今でも、お釈迦様の誕生日である4月8日には「花まつり」といって、花御堂の中に天地を指した童子姿のお釈迦様をまつり、甘茶を注いでお祝いします。
実際に赤ん坊が「天上天下唯我独尊」を唱えたが否かではなく、こうやってお釈迦様の誕生は、まつりによって伝承されてきたのです。
さて、父浄飯王にとって、シッダールタは王位を継承すべき存在ですので、大切に大切に育てられたのでした。