東の門から出て老人に会い、南の門では病人、西の門では死人に遭遇したことで、城の中でどんなに恵まれた生活をしていても、生きている限り、老病死を避けられないという事実を思い知らされ、心が折れそうなシッダールタでしたが、北の門を出て凛とした修行者を見てから、彼の心は大きく変化します。
お伴の話によると、修行者はあらゆる苦しみから解放される道を求めて洞窟や林の中で生活し、一日に生きるための最小限の糧しか求めないため、「もっと欲しい」と思い悩むことはないといいます。
あらゆる物を与えられ、父王を始めとし、多くの慈しみの中で不自由なく暮らしてきた城の中での生活とは真逆の生活に、聖なる道を見出したシッダールタは、ついに城を出る決意をしました。
これは俗にいう家出とは異なります。道を求めて、自ら修行者となることを望んだことですので、家出より遥かに志高い「出家」ということになります。
寝室ではヤショーダラー妃が幼いラーフラを優しく抱いて眠っています。
シッダールタは起こさないように静かに別れを告げます。
シッダールタも人の子、そして今や人の親でもあります。決意とは裏腹に辛い気持ちもあったに違いありません。
それでもなお出家を選んだことが、覚悟の強さを表しているようにも思えます。
いよいよ城を出る時がやってきました。